粉瘤(アテローム)は、袋状の被膜(嚢胞壁)の内側に角質や皮脂がたまる良性のしこりです。中身だけを出しても袋が残れば再発します。再発を防ぐ鍵は、嚢胞壁まで確実に取り除く“摘出”にあります。


再発が起こる仕組み

  • 粉瘤は「皮膚の内側にできたポケット(嚢胞)」+「その入り口(開口部/黒い点)」で構成されます。

  • 再発の主因は嚢胞壁の取り残し。切開排膿(応急処置)だけ、圧出だけ、自己処置は再発・感染・瘢痕の原因になります。

  • 炎症期(赤く腫れて痛い時期)は周囲組織が壊れて袋が見えにくく、完全摘出が難しくなるため、戦略が重要です。


再発を防ぐ「正しい摘出」の条件

  1. 嚢胞壁を全周性に同定し、完全に切除

    • 開口部(黒点)を含めて摘出することで取り残しを防ぎます。

  2. 炎症期と非炎症期で術式を切り替える

    • 非炎症期:根治摘出のベストタイミング。

    • 強い炎症・感染期:まず切開排膿+抗菌薬で沈静化し、2–6週間後に根治摘出を計画。

  3. 部位・サイズに合わせたデザイン

    • 顔面はシワの流れ(皮膚割線)に沿った切開で傷跡を最小化

    • 体幹・四肢はテンションを分散する縫合で創離開と肥厚性瘢痕を回避

  4. 無菌操作・確実な止血

    • 感染・血腫は創トラブルと再手術の原因。丁寧な止血と創管理を徹底。

  5. 病理検査の活用

    • 典型的粉瘤でも、摘出標本は原則病理へ。稀な腫瘍との鑑別と再発時の検討材料になります。

  6. 術後管理の徹底

    • テーピング・紫外線対策・ケア指導まで一連で実施。瘢痕トラブルを予防。


主な術式と再発リスク

  • 一塊摘出(En bloc excision)
    最も標準的。皮膚を紡錘形に切開し、嚢胞と開口部を一体で除去。再発率が低く、顔面や再発例に向いています。

  • 小切開・くり抜き法(へそ抜き法/最小切開摘出)
    3-5mm程度の小孔から袋を反転させて摘出。術者経験と症例選択が重要。嚢胞壁が破綻しやすい場合は無理をせず一塊摘出へ切り替え。

  • 切開排膿(応急処置)
    根治ではありません。炎症期の痛み軽減や感染コントロールを目的に行い、鎮静後の根治摘出が必須


部位別のポイント

  • 顔(頬・鼻・こめかみ):皮膚割線に沿った切開/真皮縫合で緊張を軽減。メイクで隠しやすい位置に配慮。

  • 耳前・耳たぶ:穿通路(ピアス孔)との関連を評価。開口部を取り込んだデザイン。

  • 背中・臀部:テンションが強く再発しやすい部位。深部剝離と圧迫固定で血腫を予防。

  • わき・鼠径部:湿潤環境で感染に注意。ドレッシング選択を最適化。


当院の治療フロー

  1. 診察・超音波評価(必要時):サイズ・深さ・炎症の程度を確認

  2. 治療方針の共有:炎症が強ければ二段階治療を提案

  3. 局所麻酔下で摘出:安全性を優先し、嚢胞壁の完全切除を最優先

  4. 病理提出:結果は後日ご説明

  5. 術後ケア:抜糸(5–10日目目安)、テーピング・日常生活の注意点を指導

  6. 再発予防フォロー:創の成熟に合わせて瘢痕ケア(テープ/保湿/紫外線対策)を併用

痛み・ダウンタイム・傷跡

  • 痛み:局所麻酔で術中痛みは最小限。術後は市販鎮痛薬でコントロール可能な程度が一般的。

  • ダウンタイム:当日~翌日は軽い腫れ・内出血の可能性。多くは日常生活が可能。

  • 傷跡:個人差はありますが、創の方向・深層縫合・テーピングで目立ちにくくします。紫外線対策が重要です。


よくある質問(FAQ)

Q. 炎症が強い時もすぐに取れますか?
A. 強い腫れ・痛み・膿がある時は、まず切開排膿で痛みと感染を抑えてから根治摘出に進む方が、取り残しと再発のリスクを下げられます

Q. 小さければ自然に消えますか?
A. 嚢胞壁がある限り自然消失はしません。放置すると炎症や破裂のリスクが高まります。

Q. くり抜き法は再発しやすい?
A. 適切な症例選択と確実な嚢胞壁の回収ができれば良好です。炎症性や癒着の強い症例では安全第一で一塊摘出へ切り替えます。

Q. 保険適用は?
A. 医学的適応のある粉瘤摘出は健康保険の対象です(自由診療オプションは別途)。詳細は診察時にご案内します。


術後のセルフケア(再発・合併症予防)

  • 指示どおりの創部洗浄・軟膏・テープを継続

  • 1か月程度は強い摩擦・圧迫・入浴で温めすぎを避ける

  • 日焼け対策(日焼け止め・遮光テープ)で色素沈着を予防

  • しこり・赤みの再燃、排膿があれば早めに受診


当院での対応

  • 形成外科医が機能と整容の両立を重視してデザイン

  • 顔面など目立つ部位は皮膚割線に沿う切開・真皮縫合・極細縫合糸を選択

  • 炎症期は段階的治療で根治性を担保

  • 術後はテーピング指導をご提案


受診の目安

  • 触れるしこりが数か月以上持続

  • 黒い点(開口部)がある

  • 繰り返し腫れて痛む/破れて膿が出る

  • 一度処置したが再度しこりが出てきた

ご不安な方はまずご相談ください。症例・部位・生活スタイルに合わせ、再発を最小限に傷跡をできるだけ目立たせない治療計画をご提案します。

 

 

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