耳たぶ(耳垂)に触れる丸いしこりは、粉瘤(表皮嚢腫)であることがよくあります。粉瘤は皮膚の下に袋状の壁(嚢腫壁)ができ、袋の内側に角質や皮脂がたまって徐々に大きくなる良性の腫瘤です。中央に黒い点(開口部)が見えることや、押すと独特のにおいのある白〜黄の内容物が出ることがあります。
耳たぶの粉瘤の特徴
触ると可動性のある丸いしこり:数ミリ〜2cm以上に増大。痛みはないことが多い。
においのある内容物:圧迫で白〜黄のペースト状が出ることがある(=完治ではありません)。
炎症すると赤く腫れて痛む:細菌感染や内部破裂で、急に腫れ・痛み・熱感が出る。
ピアス孔との関連:ピアス創の上皮が皮下に入り込み、粉瘤の原因になることがあります。
似ている病変との違い(見分けの目安)
ケロイド/肥厚性瘢痕:ピアス後に赤く盛り上がり、表面が硬く光沢。内容物は出ない。
脂肪腫:より軟らかく、においのある内容物は出ない。耳たぶでは比較的まれ。
ピアス肉芽(肉芽腫):小さな赤い粒状の増殖。止血や消毒で改善することも。
血管腫:暗赤色〜青紫色で、圧迫で色が薄くなることがある。
※自己判断は難しく、診断と最適な治療選択は受診が安全です。
放置のリスク
繰り返す炎症・感染:痛み・膿・発熱で日常生活に支障。
皮膚の菲薄化・変形:大きくなると皮膚が伸び、耳たぶが変形することも。
破裂・瘻孔形成:内容物が皮下に広がり、治りにくい状態に。
再ピアスの困難:位置や軟部組織のボリュームが変わり、理想の位置に開けにくくなる。
形成外科・美容皮膚科での治療方針
粉瘤は袋(嚢腫壁)まで完全に取り除くことが根治の条件です。状態により治療の段取りが変わります。
1)炎症が強いとき(赤い・痛い・熱い)
切開排膿(応急処置)+抗菌薬
たまった膿を出し痛みを軽減。炎症が落ち着いてから根治手術を行います。
※炎症時に無理に全摘を試みると、出血や取り残しのリスクが上がります。
2)炎症がない・軽いとき(落ち着いている時期)
粉瘤摘出術(根治術)
くり抜き法(小切開・へそ抜き法):内容物を排出後、嚢腫壁を反転して摘出。傷が小さくダウンタイムが短いのが利点。
紡錘形切除(楕円形切除):サイズが大きい、再発例、皮膚が薄い場合に適応。確実性が高い。
いずれも局所麻酔で日帰り可能。耳たぶは血流が良く、治りが早い部位です。
耳たぶならではの「きれいに治す」工夫
切開線のデザイン:耳輪の縁に沿わせたり、ピアス孔に重ねるなど、将来の見え方を配慮。
縫合法の選択:真皮縫合+極細表皮縫合で段差や糸痕を最小化。
ケロイド対策(耳はケロイド好発部位)
体質や既往を確認し、必要に応じてテーピング・シリコンゲル、ステロイド外用/注射を併用。
傷が落ち着くまで圧迫ピアスを短期的に使うことも。
再ピアスの時期:創が十分に成熟してから(目安:3〜6か月)。理想の位置相談可。
受診から治療までの流れ
診察・超音波評価(必要に応じて):大きさ・深さ・炎症の有無を確認。
方針決定:炎症期か待機手術か、切除法の選択、ケロイド対策の計画。
日帰り手術(10〜30分目安・大きさによる):局所麻酔、摘出、止血、縫合。
アフターケア:ガーゼ保護〜48時間、洗顔・シャワー再開のタイミングを指導。
抜糸:通常7日。その後は紫外線対策とテーピングで3か月程度の瘢痕管理。
よくある質問
Q. 痛みはありますか?
A. 麻酔時にチクッとした刺激がありますが、手術中の痛みは基本的に感じません。炎症が強いと麻酔が効きにくいことがあるため、応急処置→後日根治が安心です。
Q. しこりを押し出せば治りますか?
A. 一時的に小さくなっても袋が残る限り再発します。自分で潰すと感染・瘢痕の原因になるため避けましょう。
Q. がんではありませんか?
A. 粉瘤は良性です。急速増大、出血を伴う潰瘍、硬く皮膚に固定されるなどの所見があれば別疾患の可能性もあるため早めの受診を。
Q. 保険は使えますか?
A. 医学的適応がある手術治療は健康保険の対象となることが多いです(自費の美容施術とは区別)。詳細は受付でご確認ください。
Q. 手術の跡は目立ちますか?
A. 個人差はありますが、耳たぶは比較的きれいに治りやすい部位です。ケロイド体質の方は術後管理(テーピング・シリコン・ステロイド等)を強化して目立ちにくい瘢痕を目指します。
受診の目安(こんな時はご相談を)
触れるしこりが2週間以上持続している、徐々に大きくなっている
赤い・痛い・熱いなど炎症症状がある
ピアス周りに繰り返す腫れやにおいがある
再発を繰り返している、きれいに治したい希望がある
医師からのメッセージ
耳たぶの粉瘤は確実な摘出と術後の丁寧なケアで、見た目と機能の両立が可能です。ピアスの位置やデザインを含めた将来の計画も一緒に立てられます。まずはお気軽にご相談ください。
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